🦐 診療報酬改定後に考える「制度の本質」とは

【第3号】今回のトピックは、知っているようで、全然知らない日本の医療保険制度について。現場で働いているだけでは、わからないことは、たくさんあります…

前回のニュースレターでは、4月に開催される日本区域麻酔学会での講演を紹介させていただきました。今回は、診療報酬改定後ということで、3月25日(水)に国際医薬経済・アウトカム研究学会(ISPOR)日本部会の2025年度シンポジウムで、「費用対効果評価制度」について講演することになりました。厚生労働省のクレジットで外向けに話すのは、今回が初めてで、めちゃめちゃ緊張しています……スライド自体は、既存のものを使うとはいえ、色々と刷新した部分もあるので、ある意味お披露目になる予定です。

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診療報酬改定は「命を削って」の作業でした、、、。

🦁 もくじ

  1. ♨️ 日常の一枚
  2. 📻 #ワンますラジオ振り返り
    1. 👹 お前もデクスメデトミジンで脊麻をしないか?【2/9】
    2. 🌟 星状神経節ブロック×周術期不整脈で新たなイノベーション【2/11】
    3. 🌈 無痛分娩のプラクティスを根底から変えたDPEの始まり【2/12】
    4. 💤「鎮静」が初の点数化!知らないと損する算定ルール【2/16】
    5. 🏹 フェンタニルなしでいける?ブピバカイン増量で非劣性を検証【2/18】
    6. 🌿 帝王切開か経腟分娩かではなく、痛いか痛くないかが大切【2/20】
  3. 🗻 日本の医療制度、知ってますか?
  4. 🍔 アメリカの医療は、制度の教材にはならない
  5. 🏢 厚生労働省で「はたらく」までの紆余曲折
  6. 💻 徒然なるままに

♨️ 日常の一枚

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都内の日帰り温泉「由縁別邸」には、足しげに通っています

先日、3ヶ月ぶりに丸1日の有休がとれたので、都内で日帰り温泉を堪能してきました。なかなか予約が取れないのですが、1ヶ月くらい前から予定を調整して、めちゃめちゃリラックスできました〜。「よく遊び、よく学ぶ」がいちばん。

🗣️ #ワンますラジオ振り返り

最近、#ワンますラジオは、音声文字起こし→文章生成→facebook投稿までを完全自動化しています。Facebookでも新しいページを作ってみたので、そちらもフォローしていただけますと嬉しいです。


自動化できるってだけでなく、どうやらfacebookのpageという機能では、通常のウェブ検索でもひっかかるらしく、ひょんなことからアクセスがくるらしい。𝕏はバイラルに広がるので職場にも迷惑かけかねないため、ひっそりとオジさんSNSを再開しました。


とはいえ、SNSの情報発信は、蓄積されない虚しさがあるので、こっちのニュースレターで地道にコツコツ淡々とやっていきます。



👹 お前もデクスメデトミジンで脊麻をしないか?

脊髄くも膜下麻酔にオピオイドではなく、デクスメデトミジンを混ぜるのは、中国やインドで流行っています。日本でもオフラベルなので、倫理員会など書類の大変さはありますが、知識をアップデートしておくと、そのうち役に立つかもしれません。

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©️2026ワンますニュース

🌟 星状神経節ブロック×周術期不整脈で新たなイノベーション

ペインクリニックでSGBを習ったときは、「なんて怖い手技なんだ」と思っていました。でも、周術期において活用できるとなると、もうすこし身近に感じられるかもしれません。超音波ガイド下穿刺も普及しているので、新しいアプローチとして、興味深い領域です。

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©️2026ワンますニュース
🌈 無痛分娩のプラクティスを根底から変えたDPEの始まり

Dural Puncture Epidural。日本語でいうと「硬膜穿刺硬膜外麻酔」という矛盾した名称になってしまいます。実は宮崎大学オリジナルのアイディアで、これが巡り巡って産科麻酔領域に新たな一手として加わったのは、同じ日本人として胸が熱くなります。

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©️2026ワンますニュース
💤「鎮静」が初の点数化!知らないと損する算定ルール

「吸入麻酔による鎮静なんて誰がやるんだ」「そもそも手術室で忙しいのに鎮静なんてできるか」そんなご批判もあるかと思いますが、麻酔領域において新しい点数ができたことで、時代の流れが変わるかもしれません。3月5日の告示発出予定なので、そのころにもう一度解説します。

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©️2026ワンますニュース
🏹 フェンタニルなしでいける?ブピバカイン増量で非劣性を検証

医薬品の供給不安は、なにも日本だけの課題ではありません。世界中で標準治療が使えない時の代替手段についての研究が行われています。非劣性試験はサンプル数が多くなるため、なかなか難しいですが、臨床的にも意義がある結果が得られます。

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©️2026ワンますニュース
🌿 帝王切開か経腟分娩かではなく、痛いか痛くないかが大切

無痛分娩のように分娩中の痛みだけでなく、出産後の痛みについても、しっかりと向き合える時代は、麻酔科だけではなかなか難しい。出産後の痛みをちゃんと行うことで、患者アウトカムが改善し、さらに産後うつの頻度が減少したら、麻酔科医としてはめちゃめちゃ嬉しいです。

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©️2026ワンますニュース

🗻 日本の医療制度、知ってますか?

日本の医療制度について聞かれた場合、多くの日本人医師はこう答えます。

「ぼくらは医療を提供して、その対価として診療報酬が支払われている。だから制度はよく知っている」

…ぼくも、まさにそう思っていました。診療報酬点数表を眺めて、「L008 マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔は2時間で6,000点。2時間以降は30分ごとに600点加算…」みたいに“読める”ことが、制度を理解していることだと信じていました。つまり、ぼくはシステムを理解している“つもり”でした。


転機は、厚生労働省に来てから。配属されたのは、保険局医療課。そう、診療報酬点数を「運用する側」ではなく、点数を決める側の部署でした。


20年以上、日本で麻酔をかけ続けてきました。そして、その診療報酬から生まれるお金の一部を給与として受け取り、生活してきました。だからこそ、ぼくは思っていたんです。

「この仕組みは、さすがに分かっている」
「現場にいるんだから、制度のことは肌感で理解している」

でも、実際に“中の人”になってみると、見えてきた世界は、まったく違いました。

診療報酬点数表を読めることと、制度を理解していることは別物。

  • 「この点数が、なぜこうなっているのか」
  • 「何を守るための算定ルールなのか」
  • 「どんな合意で、どんな前提で動いているのか」

そのあたりを知らないまま、ぼくはずっと“制度の上で働いていた”んだと、気づかされました。

現場にいると、どうしても視点はこうなります。
- この点数は高い/低い(安い)
- この算定は取りやすい/取りにくい
- うちの病院では、こう運用してる

もちろん、どれも大事です。でも、それは制度の「表面」の話。本当に怖いのは、表面だけ分かった気になって、制度そのものを“自分が理解している領域”に置いてしまうことでした。


じゃあ、制度の「本質」って何なのか。ぼくが医療課で最初に突きつけられたのは、診療報酬は単なる「医療の値札」ではなく、国が医療提供体制を設計するための言語だという事実。医療の質、安全、地域偏在、働き方、病院経営、専門職の役割分担…。診療報酬は、それらを“設計する装置”として作られています。


そしてぼくは、長く麻酔科医としてその装置の上で走ってきたのに、装置の設計図はちゃんと見ていませんでした。


これって『医師あるある』だと思います。「制度は分かってる」そう思っていたのに、いざ制度の中心に近づくと、自分が見ていたものが“地図の一部”だったと気づく。ぼくはまさに、そこからのスタートでした。

🍔 アメリカの医療は、制度の教材にはならない

日本の医療現場にいると、ときどき見え隠れする「アメリカ医療への憧れ」。分かります。というか、ぼく自身がそうでした。

「ハーバードの Brigham and Women’s Hospital の産科麻酔で働いてみたい」

── そう思っていましたし、正直いまもチャンスがあるなら挑戦したい気持ちはあります。でも、“医療制度”という観点に限って言うと、アメリカは日本の参考になりません。この事実に、医療課に来てから何度も驚かされました。


世の中の医療システムは、ざっくり言うと二つの軸で分かれます。

  • 公的に価格や給付が設計されている医療(=ルールが先にある)
  • 市場原理が強く働く医療(=価格が先に決まる)

日本は前者がメインです。価格は国が決め、一定の給付を行い、患者さんの自己負担を抑える。もちろん細部はいろいろありますが、骨格としては「公定価格×公的給付」の世界です。


一方、アメリカは逆向き。制度はある、でも価格は一枚岩じゃない。支払う側も、保険の形も、交渉も、分断も、複雑に絡んでいます。


つまり、「同じ医療」でも「誰が払うか」で世界は全然違います。この“前提の違い”が大きすぎて、制度設計の議論をするときに、アメリカの医療はそのまま持ち込めません。これが、ぼくの最初の衝撃でした。


ここで誤解されやすいのが、「アメリカって自由診療の国でしょ?」というイメージ。たしかに、市場原理が強いのは事実です。でも一方で、アメリカには Medicare(高齢者など) や Medicaid(低所得者など) といった公的制度も昔から存在していて、完全な“自由診療オンリー”ではありません。


それでもなお、ぼくが参考にならないと感じた理由は、

公的制度があるかどうかではなく、国全体の設計思想が違う。日本のように「国が公定価格で医療提供体制を組み立てる」発想と、アメリカのように「多層の支払者と市場の力が絡み合って形が決まる」発想は、そもそも言語が異なる。

(医療課でこの違いに気づいたとき、頭の中で“カチッ”とスイッチが切り替わる感覚がありました)


さらに追い打ちをかけたのが、制度の“実装”の違いです。日本では保険でカバーされる薬や医療が、アメリカの公的制度では必ずしも同じようにカバーされていません。「え、これが対象外なの?」そんな場面が普通にあります。


これに気づいたとき、ちょっと怖くなりました。ぼくらはつい、アメリカの最先端医療や論文を見て、「日本もこうすべきだ」って言いたくなります。でも制度は“正しさ”だけで動きません。前提が違う国の話を、正しさだけで輸入すると、現場が壊れてしまいます。医療課で、そのリアリティを知った瞬間、憧れと制度の話は別物なんだと痛感しました。


だからこそ、日本が制度という観点で見つめるべきなのは、アメリカではなく、同じように公的医療の枠組みで設計されている国々です。“公的に医療を支える国”、イギリス、カナダ、オーストラリア、フランス、ドイツなど、どう設計し、どう支え、どう現場に落としているか。そこに、学ぶべき材料があります。

🏢 厚生労働省で「はたらく」までの紆余曲折

制度について、あまり話しすぎてしまうと、「もっと臨床現場に役立つ話をしてくれ」って怒られちゃうので、今日はこのあたりにします。


ぼく自身、医者になって5年目くらいに「医系技官」という存在を知りました。当時は卒後5年目までしか入省できないというルールがあったため、自分には関係のない話にカテゴライズしていました。産科麻酔を実践すればするほど、臨床現場と制度の乖離に頭を悩ませていました。


成育医療研究センターの政策科学研究部にお世話になっていた頃、学会からの派遣で厚生労働省で働いていたという小児科医に出会いました。具体的に何を学んだか、ということよりも「学会経由で厚労省に行く道がある」ということを知り、日本麻酔科学会でもそういったことができればと思いを馳せつつ、臨床に没頭。行政とは無縁のキャリアを進んでいました。


転機が訪れたのは、2022年1月。日本麻酔科学会から厚生労働省への派遣の公募があり、慈恵医大の近江禎子先生の勧めもあって、気持ちは固まりました。意を決して、照井克生教授に伝えたところ、「診療部長になったばかりだから」という理由で撃沈。『やりたいことが、全部できるわけではない』となだめられながら、仕方がないの一言で済ませていました。


もう、厚生労働省で働くことなんて、微塵も心からなくなっていた2024年3月、次のチャンスが到来。なんと、照井教授から学会派遣で厚生労働省に出向する気持ちはあるかと尋ねられ、迷うことなくYESと返事をしました。


もちろん給与は下がったし、研究アクティビティも落ちたし、なにより埼玉医大の産科麻酔科にフェローで来てくれる人たちには、申し訳ないことをしたなぁと思いつつも、やっぱりやりたいことを口に出して伝えていたからこそ、やりたいことができたんだと感じています。


みなさんも、自分の心に素直になって、やりたいことはちゃんと言語化して、夢を実現していただけると幸いです。


💻 徒然なるままに

最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。今回の#ワンますニュース、いかがだったでしょうか。


もし、内容を気に入っていただけましたら、周りの方に#ワンますニュースをオススメしていただけますと嬉しいです。さらに、いいねとか、コメントとかいただけましたら、泣いて喜びます。


3月で#ワンますラジオも1周年。リスナーのみなさまのお陰で続けさせていた来ました。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。


それでは、また次回のニュースレターでお会いしましょう。

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