🦐 周術期のGLP-1受容体作動薬って話題になっていますよね

【第2号】1/26〜2/6に放送した中医協資料+5本の論文の紹介。診療報酬における鎮静、術後鎮痛、テストドーズ、High BMI帝王切開、周術期高血圧ガイドライン等を取り上げました。今回のトピックは、糖尿病治療薬の「GLP-1受容体作動薬」。密かに増えている「誤嚥」について、警鐘を鳴らしていきます。

ようやく診療報酬改定も目処がついてきて、保険局医療課にも日常が戻りつつあります。とはいえ、論文執筆や学会講演準備など、嬉しいことにアカデミックなお仕事が少しずつ増えてきました。直近ですと、4月24日(金)の日本区域麻酔科学会のシンポジウム。日韓セッションで、「Integrating Regional Anesthesia into Japan’s Medical Fee Schedule System」というタイトルでお話しします(英語で恐縮ですが…)。リアルでお会いできるのを、楽しみにしております。

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オンデマンド配信って、これ見て知った。ちゃんとオファーの時に教えて欲しいですね

🦁 もくじ

  1. ☕️ 日常の一枚
  2. 📻 #ワンますラジオ振り返り
    1. 🏥 令和8年度診療報酬改定で「麻酔」が変わる【1/26】
    2. 🦴 周術期の「痛み」で心血管イベントが予測できる?【1/28】
    3. 🫀 妊婦と非妊婦で硬膜外のテストドーズの精度が違うって知ってた?【1/30】
    4. ⚡️ High BMIの硬膜外腔は「電気」と「波形」で同定できるか?【2/2】
    5. 🥵 術前高血圧、どこまで高くて大丈夫?(周術期血圧ガイドライン改訂版)【2/4】
    6. 🌮 無痛分娩の食事について、客観的に考える【2/6】
  3. 😱 周術期の「誤嚥」は、100%麻酔科医の過失
  4. 💉 麻酔科界隈で、GLP-1受容体作動薬って問題視されていますか?
  5. 🍭 GLP-1受容体作動薬って、めちゃめちゃ種類が多いので覚えきれない
  6. 🤫 体験することで、理解できるGLP-1受容体作動薬の臨床効果
  7. 🎧 #ワンますラジオを聴き逃した方はコチラ
  8. 🖌️ 徒然なるままに

☕️ 日常の一枚

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香りが華やかで透明感のあるコロンビア スーダンルメ

学生時代、Tully's Coffeeでバイトをしていたこともあり、コーヒーに関しては、こだわって生きています。お正月限定で購入したコーヒーの生豆を持っていくと焙煎してくれるコーヒーショップは特にお気に入り。とはいえ、夜しっかりと眠るために、15時以降はカフェインフリーで生活しています。

📻 #ワンますラジオ振り返り

ワンますラジオでは、いろんなエビデンスを紹介するだけでなく、ぼくの解釈や臨床への応用法、研究のアイディアを添えていますので、単なる文献レビューではありません。もちろん、ぼくというバイアスは入っていますが、むしろそういったバイアスがあるからこそ、議論が生まれるんだと思います。


イメージとしては、麻酔科控え室で、「ねぇ、知ってる?こんな論文読んだんだけど〜」という雑談を想像してください。耳から入った情報って、知らず知らずのうちに記憶に定着していくんですよね。そういった効果を、実は狙ってます。


とはいえ、文字で読みたい方もいらっしゃると思うので、どうぞ目でも楽しんでください。



🏥 令和8年度診療報酬改定で「麻酔」が変わる

Dr. Mazdaの所感:今回の診療報酬改定では、いままでで一番大きく麻酔の診療報酬が変化しました。麻酔科医が専従で鎮静(静脈麻酔)を行なっても、1,100点の評価だったのが、なんと新たな形で評価されます。具体的な点数については、中医協総会の「答申」でオープンになります(というか、ぼくも詳細は知りません)。

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©️2026ワンますニュース

🦴 周術期の「痛み」で心血管イベントが予測できる?

Dr. Mazdaの所感:HIP ATTACK試験のデータを用いた二次解析。術後だけでなく術前の痛みが強いことで心筋障害リスクが増加することは、もっと積極的に術前からの鎮痛に麻酔科医が関与していく必要があるかもしれません。今後は、術前の痛みが強い患者さんに対して、鎮痛の介入をすることで、アウトカムが改善するような取り組みが進むといいですね。

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©️2026ワンますニュース
🫀 妊婦と非妊婦で硬膜外のテストドーズの精度が違うって知ってた?

Dr. Mazdaの所感:硬膜外のテストドーズのゴールドスタンダードは、20万倍アドレナリン添加1.5%リドカイン。一方で、妊娠中では生理学的な変化もあるため、血管内迷入をテストドーズだけで判断することは困難です。そのため、硬膜外産痛緩和(無痛分娩)では、テストドーズが問題ないからといって、血管内迷入は否定できません。ちなみに、フェンタニルの眠気は臨床的には判断しやすいため、硬膜外のローディングにはフェンタニルを混ぜたほうが良いです。

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©️2026ワンますニュース
⚡️ High BMIの硬膜外腔は「電気」と「波形」で同定できるか?

Dr. Mazdaの所感:硬膜外腔を抵抗消失法以外で同定できる硬膜外電気刺激法(Tsui test)と硬膜外圧波形検査。どちらもNRFitとなってしまった日本では導入が難しいのが現状です。とはいえ、こういった方法で硬膜外腔を確認することは、事前に硬膜外麻酔の確実性を確認するためにも重要。簡易的なモニターによって、硬膜外腔を鋭敏に感知できる方法があるとゲームチェンジャーになりそう。ちなみに、high BMI妊婦のにおいて、T12/L1の硬膜外穿刺は、脊椎超音波も穿刺そのものも難易度が低下するのでおすすめです。カナダにいたときは、12cmの硬膜外針を根本まで穿刺して、さらに押し込むようなケースにも遭遇しました。High BMI妊婦の麻酔は、麻酔管理の観点からも難しいです。

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©️2026ワンますニュース
🥵 術前高血圧、どこまで高くて大丈夫?(周術期血圧ガイドライン改訂版)

Dr. Mazdaの所感:一昔前は、収縮期血圧160mmHg以上だったら手術は延期でしたが、このガイドラインでは180mmHgまで許容しているのは、エビデンスが蓄積されたからなのでしょうか。起立性低血圧については、これまで意識したことがなかったですが、たしかに転倒リスクと言われると、ちゃんと評価することは重要ですね。帝王切開でも手術当日に初回歩行するため、起立性低血圧の問診もルーチンにしても良いかもしれません。

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©️2026ワンますニュース
🌮 無痛分娩の食事について客観的に考える

Dr. Mazdaの所感:妊娠≠胃内容排泄遅延は、すでに知られています。妊娠中で誤嚥がハイリスクとなるのは、陣発しているかどうか。これは、陣痛によって腸管蠕動が抑制され、胃内容が停滞しやすくなるため。今回は、陣発しても硬膜外鎮痛を追加することで、胃内容の排泄が早くなることがわかりました。陣発=食止めといったアメリカの厳しい管理から、少しずつ緩和されるような動きが出てきたのかもしれません。

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©️2026ワンますニュース

😱 周術期の「誤嚥」は、100%麻酔科医の過失

 今回、最後に紹介した論文は、産科麻酔に関する誤嚥の話だったので、それにちなんだ話題、「誤嚥」に関するネタを共有します。そもそも麻酔に関連する誤嚥って、学生時代はMenderson症候群って名前で習いましたが、臨床現場ではほとんど遭遇しません。ぼくも、10年くらい前に、他院から分娩後出血で産褥搬送されてきた褥婦さんの鎮静(笑気+ケタミン+フェンタニル)をしている時に、突然大量に嘔吐があって、慌てて分娩室で気管挿管した以来、経験していません。『知ってはいるけど、経験したことは少ない』、悪性高熱ほどではないですが、周術期の誤嚥は、いまやレアな合併症となっています。

 日本で働いていると、緊急手術でも手術室の空き状況などで、適切な絶食時間が守られていなくても、クラッシュで全身麻酔を導入することがあります。ビデオ喉頭鏡が一般化している日本の手術室では、喉頭鏡は骨董鏡と呼ばれ、どんなときでも安全な気道確保ができる状況が整っているので、あたりまえになっているのかもしれません。でも、カナダで働いていたときは、「待てるんだったら、ちゃんと6〜8時間待つ」が、基本でした。そう、日本よりも誤嚥に関しては、とても厳しく、ガイドラインを守るところでした。

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 所変われば麻酔哲学も変わる。誤嚥関連の訴訟は、カナダでも稀ではありました。訴訟に対応している指導医の資料を一度見せてもらいましたが、10年以上前の事例について1,000ページを超えるPDFファイル…麻酔科医として、誤嚥について、適切に対応することは、いつの時代になっても重要ですね。

💉 麻酔科界隈で、GLP-1受容体作動薬って問題視されていますか?

 カナダで働いていたとき、Point-of-care Ultrasound (POCUS)の専門家だったDr. Arzolaと一緒に働いていました。彼はチリ出身で、南米人らしい気さくな指導医で、「Yusuke、日本とチリは同じ太平洋プレートだから、ぼくらはneighborだね」と、非常に可愛がってもらいました。(名市大で産科麻酔を立ち上げた田中基先生とフェローが同期だったこともあるかもしれません)

 そんなこともあって、日本に帰ってからも年1回、米国産科麻酔学会のPOCUSハンズオンの度に、Dr. Arzolaが声をかけてくれて、一緒に胃内容超音波を教える機会がありました。3年ほど前、New Orleansでの学会で、いつもどおり胃内容超音波のセッションを準備していると、Dr. Arzolaに呼び止められました。

「ヘイ、Yusuke、GLP-1受容体作動薬って知っているか?そう、糖尿病の新薬のアレ。いや、GLP-1受容体作動薬を使うと、ちゃんと絶食してても胃内容が残っていることがあって、カナダではトラブル源になっているんだけど、日本ではどう。」

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(Dr. ArzolaはカナダでのPOCUS研究の第一人者。)

 ちょうどそのころ、日本ではオゼンピックやリベルサスが「やせ薬」として美容医療に普及し始めていて、そのうち問題になるかもしれないと、密かに感じていました。そう思って、さまざまな麻酔科関連学会のプログラムを見ても、講演やシンポジウムで、まったく取り上げられる雰囲気が感じられず、ひとりモヤモヤした日々を送っていました。

🍭 GLP-1受容体作動薬って、めちゃめちゃ種類が多いので覚えきれない

 最近は仕事柄、SNSで自由に発信しづらい状況なので、2024年6月以降、かなり制限していますが、当時はいろいろと発信をしている中で、GLP-1受容体作動薬については、かなり反響がありました。一方で、日大麻酔科の鈴木孝浩教授のブログでは取り上げられていましたが、学会ではあまり議論されていません。

https://x.com/i/web/status/1694970013286092944

 36万人を対象とした米国保健データベース研究では、GLP-1受容体作動薬の有無によって、誤嚥のリスクが増加しないことを示しているものの、比較的新しいこの薬について、術前の休薬だけで十分なのかは正直なところ分からないことが多いです。悪性高熱を避けるためにTIVAで行えば大丈夫だから、麻酔器のウォッシュアウトを行わなくても大丈夫とは、なりませんよね。

Unadjusted Risk of Postoperative Respiratory Complications Among Patients Who Underwent 1 of 14 Common Surgeriesa.png.webp
Chen YH, et al. JAMA Netw Open. 2025; 8: e250081.

 2023年に掲載されたAPSFのニュースレターにも、取り上げられていましたが、ここに掲載されている画像を見ると、衝撃的すぎます。術中の血糖コントロールという文脈ではなく、誤嚥という麻酔科医にとって最大のリスクに対して、ぼくらはもうちょっと、EBMの則った真摯な議論を重ねていく必要があるのではないでしょうか。

 このニュースレターを書いている2026年2月現在、注意すべき薬のリストは、つぎのとおり。

週1回の製剤:オゼンピック皮下注、ウゴービ皮下注、マンジャロ皮下注、ゼップバウンド皮下注、トルリシティ皮下注
1日ごとの製剤:リベルサス、ビクトーザ皮下注、バイエッタ皮下注

ちなみに、オゼンピックとウゴービ、マンジャロとゼップバウンドは、同一成分ですが対象が二型糖尿病(オゼンピック、マンジャロ)と肥満症(ウゴービ、ゼップバウンド)で異なります。特に、マンジャロとゼップバウンドについては、製剤含有量も同じですが、薬価が異なるという特徴があります。これは『リポジショニング特例』によるもので、もともとあった適用症(二型糖尿病)と異なる適用症(肥満症)の薬事承認を別途取得することによって、異なる評価を行うと言うスキームによるものです。

🤫 体験することで、理解できるGLP-1受容体作動薬の臨床効果 

 なんでこんなに、ぼくがこのGLP-1受容体作動薬に強くこだわっているかと言うと、実際に使った経験があるからなんです。数年前、大学の先輩が開業したクリニックを受診したとき、ひょんなことで体重のはなしになりました。その先生は、アンチエイジングも専門としていることもあり、当時流行し始めたリベルサスを勧めてくれました。

 ストレスで体重が増加の一途を辿っていたぼくは、物は試しとおもって3ヶ月ほどリベルサスを内服していました(自費診療です)。あさ目が覚めたら、空腹な状態で少量の水を口に含んでリベルサスを1錠内服。その後30分間は、何にも口にしてはいけないという「儀式」を毎朝欠かさずにやっていました。

 その結果、体重は理想的なところまで落ちていきましたが、「ぼくに、この薬は合わないな…」と感じていました。なぜならば、リベルサスを内服していた間、ずっとお腹がもたれていて、常に胃内容が停滞しているという体感がありました。前日の夜に食べた食事が、朝も残っている感覚を覚え、ふと「この薬を飲んでいる状態で、適切に絶飲食をしたとしても、めちゃめちゃ誤嚥リスクが上がるのでは?」と考えました。

 N=1の、経験でしかないことでしたが、米国麻酔科学会をはじめ、諸外国の麻酔科学会がGLP-1受容体作動薬の周術期における取扱いについて議論していることから、この問題は日本の麻酔科医にとっても重要なものだと思っています。


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さまざまな一般メディアでも見る「マンジャロ」の名前

 もうひとつ、懸念があります。マンジャロは社会問題にもなりつつある点です。やせ薬として自由診療で使用されている場合、我々が普段行っている保険診療において、患者さんが後ろめたさから投薬されいることを隠してしまう恐れがあります。ぼく自身、リベルサスを内服していたときは、自由診療とはいえ、なんともいえない感情を抱えていました。違法薬物ではないものの、そういった心理的なことから、ぼくらの知らないうちに手術をうける患者さんが誤嚥のリスクに晒されているかもしれません。周術期医療のプロフェッショナルとして、保険診療外の医薬品(含OTC薬)やサプリメントについて、ちゃんと情報を得て、適切な麻酔管理を心掛けましょう。

🎧 #ワンますラジオの聞き直し

忙しい臨床のすきま時間に、お聴きいただけると嬉しいです。聞き逃し配信をこちらにまとめました。

2026年1月26日(月)

2026年1月28日(水)

2026年1月30日(金)

2026年2月2日(月)

2026年2月4日(水)

2026年2月6日(金)

🖌️ 徒然なるままに

最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。今回の#ワンますニュース、いかがだったでしょうか。


もし、内容を気に入っていただけましたら、周りの方に#ワンますニュースをオススメしていただけますと嬉しいです。さらに、いいねとか、コメントとかいただけましたら、泣いて喜びます。


それでは、また次回のニュースレターでお会いしましょう。

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